感情は、触れなくても強ければヒシヒシと伝わる事がある。
この子達みたいに、「お腹が空いたからご飯をちょうだい」「寝たいから寝る」というストレートな感情なら分かりやすいのに……。
「人間って、面倒な生き物だよね、ノラ」
「ニャア?」
「私も、ノラみたいに猫に生まれたかったよ」
人間とは難儀なモノで、複雑に感情が混じりあっているせいで、ノイズが起こる。
私も人間だけど、こんな力があるせいか、そう思わずにはいられない。
「静月、学校で何かあったのかい?」
「おばあちゃん……」
縁側に座る私の顔をのぞき込むおばあちゃんの手には、ノラのご飯が入った皿がある。
「ニャ!」
一際元気に鳴いたノラが、私の膝から飛び退いて、ご飯にかぶりついた。