そして、光が消えると、私と蒼大先輩は、夕暮れの屋上に立っていた。


そこにはもう、あの澄み渡る青空は無い。


「静月……」


「蒼大、先輩………」


私たちは、涙でぐちゃぐちゃの顔で見つめ合う。

そして、どちらともなく抱き合った。


「俺、絶対にアイツの分も長生きしてやるんだ」


「はいっ、私も……っ」


「アイツは、忘れてほしかったみたいだけどな、絶対に忘れてなんてやらないんだっ」


「私たちだけじゃなくて、みんなの心にも、きっと源先輩が生きた証が……残ってますよね」



源先輩。

先輩は、独りなんかじゃありませんでした。


だって、源先輩の為に涙を流した人がたくさんいる、その死を悼む人がたくさんいるんです。


「ありがとな、静月。ここまで、付き合ってくれて……」


「感謝するのは、私の方です。連れてきてくれて、ありがとう、ございます。私はそのおかげで、自分を前より好きになれました」


私を変えてくれたこの記憶巡りの旅を、きっと一生忘れないだろう。


「夕日、綺麗だな………」


「はい、本当に……」


そこから離れるのが名残惜しくて、私と蒼大先輩は、いつまでもその茜に染まる空を、見上げていたのだった。