そして、歩いて7、8分、紺色の屋根に白地の外装の一軒家に辿り着く。
『高塚』の表札を見て、蒼大先輩は「ここだな」と家を見上げた。
私は、コクリと頷き、おなじように10年ぶりの我が家を見上げた。
我が家と呼んでもいいのか、今じゃ怪しいけど。
「大丈夫か、静月」
「は、はい……」
そう返事をしたものの、全然大丈夫なんかじゃなかった。
繋いだ手が汗ばんでいく。
尋常じゃないくらいにドクドクと鳴る心臓の音が、とてつもなく自分が緊張しているからだと分かる。
すると、ジリッと、靴が土を擦る音がすぐ近くで聞こえた。
そちらへ視線を向けると、色素が薄い、髪……栗色のおさげの女の子が私をじっと見つめていた。
学校帰りなのか、どこかの制服を着ている。
「その瞳……静月お姉ちゃん……?」
「え………まさか、美月(みづき)?」
私は、10年たっていれば中学生であろう妹の名前を呼ぶ。
すると、目を見張って、「どうして……家に来たの」と言った。
それで、目の前にいるのが美月だと確信する。
美月、大きくなってる……私の知らないところで、大きくなっている美月に。なぜだか嬉しくなった。
私の記憶中の美月は、小学生のままで止まっていたから。


