「……行って、あなたなんていらないって言われたら?私は、もう二度と前を向けなくなっちゃう気がするんです」


そう言われたときの事を想像して、私は眉間にシワを寄せて、唇を噛み、俯いた。


「それなら……」


蒼大先輩が、私の両頬を両手で包み込む。


ゆっくりと顔を上げられ、噛んだ唇を親指で撫でられると、その温かさに、不思議だけど、一人じゃないって、思えた。


「その時は、俺がずっと傍にいる。俺には、静月が必要だからな」


「蒼大先輩が……?」


「なんだよ、不満か??それは、ちょっとショック……」


ガックリとわざとらしく肩を落とす蒼大先輩に、私は慌てて首をブンブンと横に振った。


「傍に、いてほしいです。他の誰でもなくて、蒼大先輩に。それだけで、私は立っていられます」


不思議な力を、蒼大先輩はくれる。

蒼大先輩がいてくれるなら、怖いものなんてないって、思えてしまうんだ。


「一緒に行くよ、家族に会いに行くんだろ?」

「はい……後悔、しないように」


私は、あの日から家族から逃げて、力から逃げて……今もその過去に囚われて進めていない。


だから、蒼大先輩の言う通り、ちゃんと向き合おう。


それがたとえ、悲しい結末だったとしても。



そう思わせてくれた、蒼大先輩の為にも、私はもっと、自分を好きになりたいから。