「ありがとな、静月……っ」
私は、首をフルフルと横に振り、笑みを向けた。
私が、傍にいたいって、思っただけだから。
「秋乃先輩、お願いがあります」
「お願い……?」
「秋乃先輩と、源先輩の思い出の物に、触らせてほしいんです」
「っ……どうして?」
突然のお願いに、戸惑っている秋乃先輩。
秋乃先輩を救うのは、源先輩にしかきっと出来ない。
「源先輩の想いを、秋乃先輩に伝えたいからです」
なら、源先輩の秋乃先輩への想いは、思い出の品に残ってるはずだ。
すると、ガチャッと、目の前の扉が開かれた。
「源の想い……聞かせてくれる?」
そう言って、少しやつれた顔の秋乃先輩が、私に銀の指輪を差し出した。
「はい」
私はその手ごと指輪を両手で包み、そっと瞳を閉じた。
すると、ザワザワと風の音が聞こえて、目を開けると、そこはすでにセピア色の世界。


