「はい……。何かを恐れてる…けど、これはたぶん……」
「源の事か……」
蒼大先輩にも分かったみたいだ。
私は頷いて、あの時秋乃先輩が言っていた事を思い出す。
『もうやめて!!ようやく落ち着いてきたの!!源の事なんて思い出したくないっ!!』
記憶に、感情に触れたから分かる。
あの時の秋乃先輩の心の動揺は、激しくてとてつもない悲しみと苦しみに溢れていた。
「秋乃、このままでいいのか……?」
「いい、あの痛みを思い出すくらいなら……。だから、もう帰って」
それは、明らかな拒絶だった。
それに、私と蒼大先輩はこのまま話していいものかと迷う。
でも、ずっと苦しむ秋乃先輩を、私も蒼大先輩も、見ていたくない。
「あ、秋乃先輩っ!!」
私は、扉の向こうにいる秋乃先輩に声をかける。
すると、蒼大先輩は驚いたように私を見つめた。


