「博子さん、私たち、秋乃先輩を助けたいです」
「静月……」
蒼大先輩が、私を見つめてくる。
私は、失礼だと思ったけれど、そう言わずにはいられなかった。
追い詰めてしまったっていうのもある。
だけど、それだけじゃなくて、秋乃先輩は今もきっと、過去に捕らわれて苦しんでるんだ。
ううん、秋乃先輩にとっては、過去じゃない。
乗り越えてこそ、過去の事だって、言えるんじゃないかな。
「博子さん、俺の親友は、秋乃の笑顔が大好きだったんです。俺、それを取り戻してやりたい」
「静月さん、蒼大くん……」
博子さんは考えるように瞳を閉じると、またゆっくりと、目を開けて、笑みを浮かべた。
「秋乃をこんなにも想ってくれるあなた達になら、秋乃も心を開くかもしれないわ。私の方こそ、秋乃の事をよろしくお願いします」
そう言って、博子さんは深々と私たちに頭を下げた。
それを見つめていた私と蒼大先輩は、同じ事を考えていたんだと思う。
ー『絶対に、秋乃を助ける』『絶対に秋乃先輩を助ける』。
そう、強く心に決めた瞬間だった。


