「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
私は博子さんに麦茶を受けとる。
自分でも気づかないくらいに喉が乾いていたのか、一気にコップの半分くらいまで飲み干してしまった。
テーブルにコップを置くと、たくさん入っていた氷が、カランッと音を立てた。
「秋乃は、源くんが亡くなってから、笑わなくなったわ」
私の蒼大先輩の前の椅子に腰かける博子さんは、とても悲しげにそう言った。
「源くんと秋乃が仲良しだったのは知ってたから、源くんの事を聞いた時は、私もショックだったの」
「秋乃は、源が死んだのは自分のせいだって言ったんです。俺には、その意味が分からなくて……」
「そう、秋乃がそんな事を……。もしかしたら、葬儀に出なかったのも、それと関係があるのかもしれないわ」
秋乃先輩、源先輩の葬儀に出なかったんだ。
どうしてだろう、その時には別れていたから?
でも、博子さんが言うように、想い合ってた2人が、彼氏の葬儀に行かないなんてあるかな。
私なら、クラスメートとしてでも、友人としてでも、理由をつけて参加したと思う。


