そっと、蒼大先輩から手を離して、その隣に立つ。
「源先輩のお父さんは、この横断歩道の先にある電柱にぶつかって、トラックが炎上しました。怪我人もいなくて、死人は、源先輩のお父さんただ一人です」
「…………っ」
蒼大先輩が、息を呑んだのが分かった。
震える手に、そっと自分の手を重ねる。
すると、蒼大先輩はギュッと握り返した。
「源先輩はその場にいて、燃えるトラックを見つめて、助けに行こうとしたけど……」
俺のせいだと泣いていた源先輩の姿が瞼の裏に浮かぶ。
目の前で大切な人を失うなんて、どんな痛みだろう。
想像も出来ない絶望を、源先輩は感じていたんだと思う。


