そして、我に返った途端、体を強く後ろへと引っ張られ、トスンッとお尻から落ちた。
なのに、お尻は全然痛くない。
「あ、あっぶね……静月、無事か?」
「そ、蒼大先輩………?」
振り返ると、私を抱き抱えるように後ろに尻餅をついた蒼大先輩が、安堵の息を吐いた。
蒼大先輩が、クッションになってくれたんだ。
「悪い、ギリギリまで待とうと思ったんだけど、信号赤に変わって、車が来ちまった」
「そうだったんですね、助けてくれて、ありがとうございます」
蒼大先輩がいなきゃ危なかった。
記憶を見ている間は、現実の事は全く分からなくなるから…。
「その女、本気で頭イカれてんのか?」
すると、梶 航平は呆れたように私を見下ろす。
私は、梶 航平を静かに見上げた。
「梶…先輩、嘘をついていますね」
「あぁ?喧嘩売ってんのかよ」
唐突に言った私の一言に、梶 航平は不機嫌になる。
蒼大先輩は、私の手をゆっくりと引いて、立ち上がらせてくれた。


