「……そうだね、親は、子にとって一人きり。たとえ離れていても、父は父、母は母なのよ」
「はい、そうですよね」
おばあちゃんと蒼大先輩が話している話が、まるで私に向けられているように思えた。
家族は私にとって、一人きり。
だけど、もう修復出来なくなってるのなら、私に家族なんて……。
「静月……」
「私の家族は、おばあちゃんだけだよ……」
心配そうな顔で私を見つめる蒼大先輩から視線を逸らした。
いっそ、病気で亡くなったとか、その方が良かった。
同じ世界で憎まれ続けるより、ずっといい。
「蒼大くん、みかんがあるんだけど、一緒にとりにきてくれるかい?」
「え?は、はい!」
おばあちゃんに連れられて、蒼大先輩が台所へと行ってしまう。
私は、食べ終わった皆の皿を集めて手にとった。
そして立ち上がり、後を追うように、台所へと向かう。


