「あ……」
スマホの画面にいたのは、私だった。
中学校の卒業アルバムなのだろう。
セーラー服を着て、髪型は今の私と変わらない。
ただ、顔写真の下には、『木下(きのした)彩智』と名前が書かれていた。
私でいて私じゃない存在が形としてこの世に残っている。
「私……だね……」
「そうだね。今と変わらない感じだけど、なんか……」
「無理して笑ってる感じ?」
「あ、優花もそう思った?そうなんだよな。写真だから緊張してんのかなあとも思ったんだけど、俺も笑顔が固いなって思ってたんだ」
「……雄太郎さんが言っていたんだけどね。記憶を無くする前の私は、『もう過去のことなんて忘れたい』って言ってたんだって」
「そうなの?」
「うん。それが何なのかは教えてくれなかったけど……」
「もし優花が辛くないようであれば、拓に中学の時の優花の様子とか聞いてみる?」
「お願い」
「分かった」
私は一紀にスマホを返し、足を止めた。