「私も優花ちゃんと同じくお兄ちゃんがいたんだけど、今でもよく喧嘩するよ?私たちの場合は、大抵兄が悪かったって言って謝って喧嘩が終わるかなあ」
 


「そうなんですか」
 


「しかもね、そういう喧嘩のことって男は覚えてないもんでさ。いつも同じことで喧嘩するのよ」
 


「ふうん……」
 


「いつも通りしてるってことは、それだけ優花ちゃんが可愛いってことなんじゃない?」
 


「そう、なんですかね」
 


「まあ、本当の気持ちは、お兄さんにしか分からないけどね」
 


小嶋さんはそれだけ言うと、検品作業を続けた。
 
雄太郎さんにとって、私は変わらず『可愛い妹』ということなんだよね。







 
雄太郎さんが運転する車の中で、しばらくバイトが遅くなることを伝えた。

雄太郎さんは「優花がそうしたいのならいいよ」と言ってくれた。
 


「受験勉強あまり出来ないと思うけど……それでもいいの?」
 


「いいよ」
 


「……どうして急に、いいってことになったの?バイト入れることあまり良く思ってなかったじゃん」
 


「ああ……うん、そうなんだけど。優花がそうしたいって思ったことをさせてあげたいって思ったから。それに……」
 


雄太郎さんは、そう言って口をつぐんだ。