「彩智……雄太郎さんのこと……好き、だった?」
その一言を口に出した瞬間、ぶわっと体の奥から熱が上がっていく感覚がして、心臓が急にドキドキと激しく動き出した。
私はそれに驚いて急に動き出してしまった心臓の動きを止めるように、胸の上から左手を強く当てた。
その考えを頭から出してしまいたくて、ぶんぶんと首を横に振った。
洗面台のところにあったコップを軽くゆすぎ、その中に水を入れてゴクゴクと一気に飲み干した。
ベッドの方へと急ぎ足で戻り、腰を掛けて息を整えた。
「はあ……もう、わけ分かんない……」
落ち着こうと思って座ったのはいいものの、やっぱりなんだかそわそわしてしまって、私は立ち上がって窓を開けた。
さあっと流れ込む風が私の髪の毛を揺らした。
目に映るのは見たことがある景色だった。
窓からは病院の入り口と、そこに面する狭い道路が見えた。
ちょっぴりだけ小高い場所にあるこの病院は、街並みを見渡すことができる。
城下町ということもあって、木造の古い建物なんかがちょこちょこ見える。
その古い建物に交じって見えたり見えなかったりする歩行者は、20代くらいの人が多くていきいきとした表情で歩いている。
この古いものと新しいものが入り混じっている感じが好きだなと思ったことは、過去にもあった。それを見たのは一年前。
目覚めた日のことだった。
「そうか……ここ、美由紀さんがいる大学病院だ……」
美由紀さんがいる大学病院は、私が住んでいる町の端っこにある大きな病院だ。

