雄太郎さんの話を聞いて分かったこと。
私の名前は、彩智。
記憶を失う前の私は雄太郎さんと仲がいい友達で、『過去のことなんて忘れたい』と思っていた。
一人になって冷静に考え始めると、色々な疑問が頭の中に浮かんだ。
そもそも私の母は生きているのに、どうして赤の他人である雄太郎さんと一緒に住んでいるのか。
そうだとしたら、私が記憶を無くする前の火事は、雄太郎さんがついている嘘なのではないだろうか。
雄太郎さんに対する不信感はちょっとずつ大きくなるのに、考えるたびに浮かぶのは雄太郎さんが言っていたさっきの言葉だ。
『守ってあげたいと思った』
「あんなこと言うのは……ずるい……!」
その言葉を思い出すと、大きくなっていた不信感が急に小さくなってしまうのだ。
信じられないけど信じたいって心のどこかで思っているのだ。
私は布団を頭から被り、まっくらな世界に身を潜めた。これから私はどうしたらいいのか……答えが欲しかった。
その時、ブーブーっと、スマホのバイブ音が聞こえた。
布団の中から頭を出し、音の鳴る方を確かめてみると、ベッドの横に置かれたテレビ台の下の引き出しの中だった。
その引き出しを引っ張って中を見てみると、海に旅行にいった時に持って行った小さなショルダーバックが入っていた。
音は、そのショルダーバックの中から聞こえていた。
中を確かめてみると、インスタントカメラやスマホなんかが旅行の時のまんまに入っていた。
震えていたスマホを取り出し、着信を確認すると、一紀からのメッセージだった。
一紀からのメッセージは、海に行った次の日から三日間、一日一通ずつきていた。
一日目のメッセージから順に開こうと思い、ボタンを押した。

