「どうして、お兄ちゃんのふりなんてしたの?」
 


「守ってあげたいと、思ったんだ……あまりに君が辛そうだったから……せめて近くで、お兄さんとして守れたらって」
 


雄兄が言った、『君』という言葉が決定的なものになり、目の前にいるその人は、本当に兄ではなかったのだという考えが、私の中にストンと落ちてきた。

そう思えたら、何かふっきれたような感じがして、私は思っていたよりも冷静にそのことに向き合えていた。
 


「私と、その……雄太郎さんは、いったいどういう関係だったんですか?」
 


「俺たちは、友達だった……色々悩みを相談し合えるくらいの仲がいい、友達……」
 


友達……ただの友達が自分のお金を使ってまで、自分の家に住まわせて、高校にも通わせてくれて……そんなことできるのだろうか。

何か違和感があった。



 


「仲がいい友達だったとしても、高校に通わせるとか、こんなお金のかかるようなことするものなの?ここまでしてもらう理由がありません」
 


雄太郎さんは、下げていた頭をあげ私を見ようとしたが、私は目を合わせるのも怖くて、視線を窓の方へ持っていき、目を合わせないようにした。
 


「君には助けてもらったから!だから、どうしても幸せになってもらいたくて……お金がかかるとかそんなの別に考えたことなかった。大事なんだ……彩智でも優花でも俺にはそんなのどっちでも良くて……君だから……!」