目を開けると、真っ白い天井が見えた。
 


「優花?」
 


聞き覚えがある声が聞こえて、ぼんやりとした意識の中声がした方へ顔を向けると、そこにいたのは、目に涙を溜めた雄兄だった。
 
その涙が頬を伝い落ちていく。
 


「もう、目開けないかと思った……」
 


雄兄はそう言って、私の頬にそっと手を当てると、はあっと震えるような息を地面に落とした。

雄兄は、ベッドについていたナースコールのボタンを押すと、「目が覚めました。お願いします」と言っていた。
 
布団の上に出された自分の手に違和感を感じて見てみると、点滴の針が刺さっていた。


ここは、病院……か……。


病室に来たお医者さんと雄兄の会話を聞いていて分かったことは、どうやら私は、3日間眠り続けていたらしい。

最後の記憶は一紀から逃げて砂浜にいたときだから、あの後、眠ってしまったのだろうか。
 

お医者さんが部屋から出ていて、病室は、私と雄兄の二人だけになった。

雄兄は、部屋の中にある洗面台でタオルを濡らして、私の顔を拭いてくれた。

その優しさが心苦しかったけれど、起きたばかりの私は体がだるくて抵抗することが出来なかった。
 


「俺にこんなことされるのは嫌だろうけど……」
 


雄兄は、私の思っていることが分かっていたのだろう。

そんなことを言いながら申し訳なさそうな声を出した。

私はそんな雄兄を直視することができずに、ずっと視線を天井の方へ向けていた。