「それって、良い意味で気を遣ってくれてるんじゃないの?」
「そうなんだけど……私はそれが嫌なんだ。私は別に元気だし病気でもないし……」
私は海の向こうに小さく見える船を見つめながら、「だから、昔のこと早く思い出したいなと思うんだ」と、呟いた。
「……雄兄って、本当に私のお兄ちゃんなのかな?」
「雄太郎さんが武田さんに嘘ついてるってこと?」
「……あの話が本当ならね」
「もしそうだとしたら、俺の姉ちゃんも知ってて嘘ついてるかもしれないな」
「うん……信じたくないけどね……」
「もし、雄太郎さんがお兄ちゃんじゃないって分かったらどうするの?」
高森君の言葉にドキンとする。『本当に私のお兄ちゃんなのかな?』と口では言っているけど、そんなこと本当はあってほしくないと思っていたからだ。
「……」
私は高森君の言葉に何も答えることが出来なかった。
そんな私を見て高森君は私と同じ方向に視線を移して「そうじゃなきゃいいな」と小さく呟いた。

