砂浜には、太陽の光が力強く落ちていて眩しいくらいだった。
高森君と一緒に、イカ焼きを食べた時と同じ場所に座った。
もしかしたらあの男の子がまた来るかもしれないという期待と、海を見てなんとなく心を落ち着けたいという気持ちがあったからだ。
ビーチボールが出来るネットが張られた場所には、もうあの男の子の姿はなくて、大人の男の人達がビーチバレーをしていた。
もう帰ってしまったのだろうか。
そもそも彼はこの辺りの人だったのだろうか。
私みたいに遠くから来ているのだとすれば、きっともう会うことはできないのではないか。
今冷静になって思う。
ちゃんと話聞いておけば良かった……。
「ねえ……サチってどんな子だったのかな?」
「ううん……いい子だったんじゃない?」
「……なんでそう思うの?」
「あいつ、サチって子のこと思って泣いてたじゃん。その子がいい子じゃなかったら、あそこまで必死にならないし、泣かないと思うんだよね」
「……なるほどね……」
『サチ』という名前が、私の記憶に残っていないのか。
それを確かめたかった私は、両手で顔を覆って目を閉じた。
「サチ……サチ「……」と何度もその名前を呟きながら頭に神経を集中させたけれども、その答えは一向に出なかった。
出てくるのは、諦めが混じった深いため息だけだった。
「無理……何も分からない」
「武田が分からない以上に、この状況が何なのか俺、分かってない」
「あ……そうだよね」
「うん。こうやってただ付き合ってんのも、そろそろ飽きてきたし……落ち着いてそうだし、話きかせてよ」
「うん……」

