菜子と美由紀さんと雄兄は、私たちが来てもいいように6人がけのテーブル席をとっておいてくれていた。
「大丈夫?」
雄兄が、私を心配そうに見つめながら自分の隣の席の椅子を引いてくれた。
そこに座らなきゃいけないのかなと思い、心を整えようと深く息を吸っていたら、高森君が私を追い越してその場所に座り、代わりにその隣の席の椅子を引いて私が座れるようにエスコートしてくれた。
雄兄との席が一つ空いたことで、気が楽になった私は、
「大丈夫だよ。良くなった」
と、雄兄の質問にもいつも通りに答えることができたのだ。
「それなら良かった。ランチセット人数分頼んだから、もう少しで来ると思うよ」
美由紀さんが、私たちの分の箸を手渡しながらにっこりと笑った。
「変なことされなかった?」
私の斜め前に座った菜子が、高森君に口元が見えないようにこそっと話しかけてきた。
「いやいや。聞こえてっから」
高森君は、そんな菜子につっこみを入れた。
菜子は、そんなの聞こえていないかのようにもう一度、「されてないよね?」と聞いてきたので、「されてないよ」と笑いながら返した。
「一紀君、ありがとね」
雄兄が、高森君にお礼を言った。
「いえいえ」
「もし、優花になんかしてたら許さなかったけど。してないよね?」
「雄太郎さんまで、本当何なんっすか!?ネタですよね、もう」
「そうかもしれないけど、半分は本気。優花は大事な妹だからね」
雄兄は、隣に座っていた高森君の肩をぽんぽんと叩いた。
この一連のやりとりを見ている限り、雄兄が、私の兄ってことに違和感なんて感じられなかった。

