部屋に入ってすぐ左の壁のところにカードキーを差し込むところがあって、高森君がそこへカードキーを差し込むと、暗かった部屋にパッと明かりがついた。
高森君の大きな背中を見ていたら急に泣きそうになって、私は高森君に背中を向けた。
「武田?」
「高森君……お願いがある……自分じゃ見れないからさ……私の首の後ろに痣があるか確認してくれる?」
「でも、あれは人違いだろ?」
「お願いっ……!」
私の声は、震えていた。
高森君はしばらく黙っていてその後、「分かった」と返事をした。
高森君の手が私の髪の毛に触れる。
高森君の両手で軽く束ねられた私の髪の毛が肩から前の方に流された。
「……痣、ある?」
「ある……」
「嘘だ」
「……嘘じゃないよ」
「駄目だ。信じられない。あっ。そうだ高森君が嘘ついて騙したって記念に写真とっておこう」
私はショルダーバックからインスタントカメラを取り出し、高森君に渡した。
「その痣、カメラで撮ってよ。もしなかったら怒るよ、私」
高森君は黙ってカメラを受け取ると、インスタントカメラで私の首の後ろを撮影した。
「うまく撮れてるか分からないけど……」
高森君は出てきた写真のフィルムを私に手渡した。

