「あんた、優花ちゃんが弱ってるからって手出さないでよ」
美由紀さんは、冗談っぽく高森君に言うと、ホテルのカードキーを高森君のポロシャツのポケットに入れ、「3階の302号室だからね。よろしく」と言って、心配する雄兄と菜子を連れてホテルの一階のレストランに入っていった。
高森君は、みんながレストランに入っていったのを確認してから、「本当に大丈夫?」と尋ねながらエレベーターのボタンを押した。
「正直……ちょっと混乱してる」
「ああ。さっきの変なやつが言ってたこと?人違いだろ?別に気にすることないじゃん」
「……あ、エレベーターからは自分で歩けると思うから……降ろしてくれる?」
「うん」
高森君は、しゃがんで私を背中から降ろしてくれた。
それからすぐエレベーターが上の階から降りてきて、中の宿泊客が下りてきた後、私と高森君はエレベーターに乗り込んだ。
「……この話、信じられるかどうか分からないんだけどね……」
「うん……」
エレベーターが3階に着き止まった。
私と高森君はエレベーターから降りた。
302号室は、エレベーターを降りた斜め前にあって、高森君は部屋を見つけるとポロシャツのポケットの中からカードキーを取り出して、部屋の扉を開けた。

