「えっとね、来る途中のお店で買ったイカ焼き。美味しすぎておかわりして買ったんだよね」
「え!?おかわり?これからホテルで美味しいランチ食べれるって行ったから迎えにきたんだけど……」
「あ。大丈夫です。私たちはあまり食べていないので。ほぼほぼ高森君が食べていただけですし」
菜子は、高森君を指さしてまるで悪人かとでも言うように、雄兄に告げ口をした。
「だから悪いと思って買ってきたじゃん」
「こいつ最近家でもめっちゃ食べるの」
「え?あのくらい普通でしょ?高校生男子の食欲は無限みたいなもんでしょ?ね?雄太郎さん」
「どうだろ?俺、あんまり食べなかったから……」
「わあ……。俺、超アウェイ……」
高森君はそう呟いて、そして私の方を見た。
私と目があった高森君は、口をぱくぱく動かして『大丈夫?』と、みんなには聞こえないように私を気遣ってくれた。
私は、唇の端をちょっとだけあげて、こくんと頷いた。
でもきっとその表情を見て、私が大丈夫ではないことを高森君は悟ったのだろう。その後、私の背中にそっと自分の手を当てた。
高森君が当てた手は、じんわりと暖かくてその温もりを感じながら、ざわつく自分の心が少しずつ落ち着いていったのが分かった。
「優花どうした?なんだか顔色が悪いよ」
雄兄が心配して私の顔を覗き込んで目が合った瞬間、『お前、お兄さんなんていたっけ?』という言葉が頭の中をぐるぐる回って、体が強張っていく感覚が私を襲った。

