【完】さらば憧れのブルー


「ごめんなさい……分からないです……」
 


「その声、絶対彩智だ!何か訳あって別人のふりしてんのか?」
 


食い下がらない男の子に高森君は、「証拠ないでしょ?」と冷静に答えた。
 


「あるよ。本物の彩智だったら、首の後ろくらいに紫のハートの形みたいな痣がある」
 


その男の子は、高森君の後ろに隠れていた私に手を伸ばしてきた。その時、
 


「優花!」
 


遠くの方で雄兄の声が聞こえた。

声がした後ろの方を見ると、美由紀さんと一緒ににこにこ笑いながらこちらに歩いてきている雄兄の姿が見えた。
 


「すいません。兄が迎えに来たので行きます」
 


私は空けた缶とイカ焼きが入ったビニール袋を両手に抱えると、その場を離れようとした。
 


「兄って……お前、お兄さんなんていたっけ?」
 


男の子がそう言ったけど、私は聞こえないふりをして足早に雄兄の元へ駆け出した。
 
高森君は後から菜子と一緒に追いかけてきてくれて、「何かあった?」と聞く雄兄に対して「何でもないよ」と答えた私に合わせて、「地元の人に俺が声かけられて話してただけですよ」と言って何も言わないでくれた。
 


「そういえば、優花の持ってる袋何?美味しそうな匂いがする」
 


雄兄が、私の持っている袋を覗いてきた。