「一気に飲んだらお腹壊すかもよ」
「ちょっと、気合い入れたんだ」
「気合い?」
「うん……あのさ、武田。俺別に誰にでも優しいってわけじゃなくて、武田だから優しくしてるの分かってる?」
高森君と目が合う。
「俺、武田のこと……」
高森君が何か言おうとしたその時、私は後ろから誰かに腕を掴まれ強い力で立ち上がらされていた。
驚いて振り向くとそこにいたのは、さっきまで砂浜の方でビーチバレーをしていたあの男の子だった。
「やっぱり……彩智(さち)!お前急にいなくなって……今まで何してたんだよ」
その男の子の表情はなんだか怒っていて今にも殴られてしまうんじゃないかというくらい怖かった。
「何言ってんだよ。サチって誰だよ!」
高森君が私の腕を掴んでいた男の子の手を無理やり引きはがし、私の体を自分の方へと引き寄せ背中の方へ隠してくれた。
「彩智は、俺の幼なじみだ」
「この人の名前はサチじゃないよ。人違いじゃないですか?」
「人違いじゃない!絶対彩智だ!」
その男の子はすごく必死で、目には涙が溜まっていた。
「最初遠くで見たときは、人違いかとも思ってたけど、近くで見たら間違いない。15年も一緒にいた俺が、彩智のこと間違うわけない」

