「本当は、お兄さんと二人で行きたかったんでしょ?」
 


「えっ!?」
 


「顔に出すぎ」
 


高森君は我慢が決壊したように、声に出して笑いだした。

私は、急に恥ずかしくなってスマホを持っていない手で自分の真っ赤になっているであろう顔を必死で隠した。
 


「俺のお姉に嫉妬されない程度にしておけよ」
 


高森君は私の肩をぽんぽんと叩くと、「ちょっと二人と話してくる」と言って階段を降りて行った。

私は、この気持ちを落ち着けようと、高森君が下に降りてしばらくしてから階段を降りた。
 


いつ旅行にいくだの、どこに泊まるだのそんな話をしている三人の横で、私はコーヒーを淹れた。

いつもは、ミルクと砂糖を入れるのだが、今日はそんな気分になれずに、雄兄がいつも飲んでいるブラックコーヒーにした。  


口にちょっぴり入れるがとっても苦くて、一口飲んだだけで挫折してミルクと砂糖を入れた。


平気な顔をして雄兄ちゃんと美由紀さんがブラックコーヒーを美味しそうに飲んでいる姿を見ながら、雄兄のことを卒業しなきゃな……という思いが心の隅っこに芽生えた。