高森君は、私の言葉を聞いて、「うーん」と唸りながら空を見上げた。
「ということで、菜子。答えがないということだから、悩めばいいじゃん」
「そうは言っても……難しい……」
そんなことを言いながら、校門を出ようとした時、「優花」と、私を呼ぶ声が聞こえた。
学校の駐車場に止められた雄兄の車の運転席の窓が開いて、雄兄の顔がのぞいた。
「バイト、休みなんだね」
菜子はバイトのない日は雄兄の車が来るのを知っているから、当たり前のように呟いた。
「うん。そう。ついでだし、私の家にこのまま来てちょっと話でもする?」
「え!?いいの?やった!」
菜子は、私の腕にぎゅっと捕まると、小さくぴょんぴょんと跳ねた。
「お兄ちゃんに聞いてくるから待ってて」
私はそう言って、高森君と菜子を置いて、雄兄の車の元へ走った。
「雄兄、あのね今日菜子をそのまま連れて行っても……あ……」
そこまで言って私は言葉を止めた。
「優花ちゃん、久しぶり」
そう言って、私がいつも座る特等席に座っていたのは、雄兄の彼女の美由紀さんだった。
美由紀さんは、雄兄と同じ大学出身で今は大学で心理学の助教授として働いている。雄兄とは、大学時代からずっとお付き合いしているのだそうだ。

