【完】さらば憧れのブルー


私は、後ろにいた高森君をちょいちょいと手招きしながら呼び寄せ、昨日のことを聞いてみることにした。


菜子は気まずそうに下駄箱から外靴をとると、靴をいそいそと履き始めた。
 


「ねえ、昨日菜子が言われたことって、みんな知ってるの?」
 


「うーん、どうだろ?俺、二人で話してるのをたまたま聞いただけだから……カラオケの部屋の外で話してたし、俺と、告ったそいつと有村さんが話を広めてなければ、知らないと思う」
 


「実際、君話してるじゃない……ああ!もうやだっ」
 


菜子は靴を履き終わって立ち上がると、頬をぷっと膨らませて高森君をにらみつけると玄関から外に出て行ってしまった。
 


「ごめんっ!このことは、武田さんにしか話してないから!」
 


高森君は出ていく菜子の背中に、声を届けるようにして菜子の後を慌てて追った。

私も一緒に菜子の後を追い、泣きそうになる菜子の手を取って、「大丈夫。この話私と高森君しか知らないから。高森君、菜子が困ってたかもって心配して私に教えてくれたの」と言って、頭をぽんぽんと撫でて慰めた。
 


「ごめんっ……こうして誰かにこんなこと言われたの初めてで……どうしたらいいか分からなくて……昨日ずっと考えてたら、優花にも言えなくって……」
 


「そうなんだ」


ぽつりぽつりと、目にじんわり涙を貯めながら顔を真っ赤にしてつぶやく菜子がとっても可愛らしくて、私はさらに頭を撫で続けた。