菜子は、朝話していた子と食べているようだった。
一方私はというと、変な気を使われて高森君と一緒に食べる雰囲気を作られてしまった。
私と高森君の周りにはクラスの女子や男子が机をくっつけて固まっているのだが、明らかにそのグループは、私たちを中心として作られていて、高森君はまた「悪意を感じる……」と、呟いていた。
そう言って拗ねている高森君がなんだか面白くなってきて、私は通学バックの中からインスタントカメラを取り出し、写真を撮った。
「え!?何!?写真」
カメラの音に驚いた高森君が、びっくりして顔の前に両手でグーを構えてファインティングポーズを撮った。
「武田さん、やるね!好きな人の写真は撮っておきたいもんね!」
私は周りの女子たちがはやし立てたけど、「いやいや、みんなのことも撮るけどね」と、間髪入れずに隣で食べていた女子たちのこともインスタントカメラで撮影した。
女子たちは、「ちょっと、絶対今変な顔した!」と言って、高森君よりも慌てふためいていた。
そんな様子をげらげら笑って見ていた高森君の隣の男子たちのことも撮影した。
「ていうか、なんでインスタントカメラ?」
高森君が自分が映されたフィルムを人差し指と親指でつまんで、じっと見つめながら質問してきた。
「すぐ形に残るのがいいなと思って」
「ふうん?あ、なんかぼんやりとだけど形出てきた」
「そうそう。こんな風に徐々に形ができて、色がついてっていうのも好きでさ。ふふっ……帰りに菜子も撮ってあげようっと」
高森君の唇を少しだけ尖らせたような拗ねた顔が、思ったよりも面白く撮れていて、菜子の顔もこんな風に自然な感じで撮りたいなと思った。

