【完】さらば憧れのブルー


「あれ?早かったね」
 


高森君が、勉強道具を机の中にしまいながら、後ろの席に戻る私に、体を半分だけ後ろにひねりながら声をかけた。
 


「うん……他の子と話してたし、今じゃなくてもいいかなと思って」
 


「教室飛び出して行くくらい気になる話題だったのに?」
 


「まあ、それもそうなんだけど……」
 


私はそう言いながら、去年出会ったばかりの菜子のことを思い出していた。

出会ったばかりの菜子は、極度の人見知りからか私が転校してくるまでは、ほとんど一人で過ごしていたのだそうだ。

私と一緒にいるようになってからは、私を介して色々な人と話すようになり、少しずつ人見知りの症状も収まっていったように感じていた。
 

だから、菜子が誰かと一緒にいるのを見るのは、嬉しいことなのだ。

それと同時に、『私がいなくても菜子は大丈夫』という思いが、ふと頭をよぎった。親心のようなものなのか?




昼休みにでも話そうかなと思っていたけれど、「お互いのクラスの人と食べた方が、いいんじゃない?」と私から菜子に提案して、放課後に話をすることにした。

菜子は、「どうして?一緒に食べようよ!」と少しだけごねたけれど、「もうすぐ学年遠足もあるし、その時一人だといやでしょ?」と言ったら、独りぼっちが苦手な菜子は、「そうだね……」と、しぶしぶ納得していた。