「どうしたんですか?」
 


「ごめん……私、そういう思いであなたを雄太郎の妹にしたわけじゃないの……ただ怖かったの。

あの時、雄太郎の記憶を書き換えて、私の恋人にしたけれど、急に思い出したらどうしようって……だから、私あなたをいつでも見張っておけるように……妹だったら好きって気持ちにブレーキをかけられるのじゃないかと、ただそう、私の都合がいいように……」
 


美由紀さんの言葉に、自分の決意が鈍りそうになったけれど、私は断ち切るように首を横に振った。
 


「美由紀さん、私今の言葉聞かなかったことにします。そうじゃないと、美由紀さんと結婚を決めて旅立とうとしている雄太郎さんの気持ちはどこに行っちゃうんですか?雄太郎さんは、美由紀さんを選んだんですよ?」
 


「……いいの?」
 


「いいも何も、それが本当のことなんだから」
 


ポケットからハンカチを出して、美由紀さんの頬を伝う涙を優しく拭いた。
 


本当の記憶を取り戻したくて仕方なかった私は、今、このままでいいと願っている。


それがみんなの幸せだと思うから。









真っ青な空を飛んでいく二人を乗せた飛行機を一紀と二人で消えるまで見つめ続けた。
 


「行っちゃったな」
 


「そうだね」
 


「姉ちゃんとどんな話したの?」
 


「雄兄をよろしくって。そんな感じだよ。一紀は?」
 


「俺は、優花と雄太郎さんは似てるって。二人とも大馬鹿ヤローだって。そんな話したよ」
 


「……どんな話よ」
 


「いい話だよ。お互いがお互いのこと大事に思い過ぎだって話」