「おはよ。あれ?二人仲いいじゃん」
 


「仲いいって……別に話ししてただけだろ?なんだ?その悪意のある感じ」
 


「えー。だって高森君、武田さんが帰ったあとなんだか寂しそうだったし」
 


その言葉を聞いた高森君が取り乱しながら「お前何言ってんだよ!そんなことないだろ!」と、必死にその言葉を訂正しようとしていた。
 


「別にそんなんじゃないんだ。ただ、お互いの兄弟の話してただけだから」
 


「ウケる……高森、そんなんじゃないって言われてるよ」
 


高森君は、その言葉に気分を悪くしたようで、「うっせー。お前らもうあっち行け」と言いながら、手でしっしっと追い払うような動きをした。
 
女子たちは、きゃあきゃあ言いながら、私たちを時折振り返りながら教室を出て行った。
 

高森君は気まずそうに頭をぽりぽりかきながら、「そういえば……」と言って、ブレザーのポケットの中からスマホを取り出した。
 


「昨日いろんな人とLINE交換したんだけどさ、有村菜子さんっていう人が武田さんの友達なんだよね?」
 


「うん。隣のクラスの眉毛がこんな子ね」
 


私はそう言って、自分の眉毛の端っこを人差し指で下げて、困ったような眉毛を作った。
 


「そうそう!困ったような眉毛の!」
 


高森君も、スマホを持っていない手の人差し指で自分の眉毛の端っこを下げた。
 


「菜子がどうかしたの?」
 


「うん。昨日の帰りに、同じクラスのやつに、付き合わない?って言われて困ってたから気になってさ」
 


「え!?そうなの!?ちょっと、それ聞いてないから今から行って聞いてくる!」
 


私は、菜子のクラスに行き、後ろの扉から菜子を探した。

窓際の席で前の席の子と楽しそうに話す菜子の姿が見えた。楽しそうにしている菜子を見ていたら、なんだか今この話に水を差すのも悪いなと思い、私は自分のクラスへと戻った。