「もし……もしそうだったとしても、それは雄太郎さんが望んで私の気持ちを書き換えたってことでしょ?依存している私がちゃんと離れられるようにしたことなのかもしれない」
 


「優花……」
 


「いいの。もう……どれが本当なんてそんなこと、もう……」
 


そう言って私は、食卓テーブルの上に置かれていた、握られた一紀のこぶしを手のひらで包んだ。
 


「私、今本当に幸せだって思ってる。もし私が雄太郎さんが好き『だった』のだとしても。今ここで本当の記憶が戻ったのだとしても、私は一紀を選ぶよ。この気持ちは書き換えられたものじゃないから。だから、このことは、もう忘れよう」
 


一紀にそう言うように、私は自分自身にもその言葉を言い聞かせていたのかもしれない。
 


「だから、これからは一紀が傍にいてくれる?」
 


「……うんって言うに決まってるじゃん……」
 


一紀はため息をつきながら頭を伏せて、「バカ優花……」と呟いた。


そして、「雄太郎さん以上に、優花が辛いときは傍にいるから」と、包んでいた私の手に指を絡ませて握り返した。