「雄兄」
 


「何?」
 


「受験の結果が分かったら、伝えたいことがあるんだ」
 


「ふうん。いいこと?悪いこと?」
 


「いいこと、かな?」
 


「それならいいね」
 


雄兄は、お弁当を手慣れた手つきで大きめのハンカチに包んで私に手渡した。

あったかいぬくもりが手のひらから伝わってくる。
 


「あのさ、俺もその……優花が伝えたいことがある時に、伝えたいことがある」
 


「うん……分かった」
 


私は雄兄に、にこっと小さく微笑みお弁当をリュックの中に閉まった。

薄めのダウンジャケットを着て、耳当てを首にかけた。
 


「じゃあ、そろそろ行こうか」
 


「うん」
 


車のキーを持って玄関を開ける雄兄の背中は、こうしていつまでも一緒にいるものだと思えるくらいに逞しかった。



きっと、雄兄の伝えたいことは……
 




私は目を閉じて、来るべき時の言葉を頭の中に巡らせた。