「どうして、私たちがここにいることが分かったの?」
「……優花のお母さんから電話があったから」
「私の?」
「そう。もう今さら隠してもどうしようもないよな……優花の記憶を消したことに対して、報酬を求めてきたから」
「報酬って……」
「実験が成功したんだから、もっとお金をよこせってこと……」
「じゃあ、やっぱり……」
「そう。優花の記憶は、俺が開発した薬が原因で消えた」
暗くてはっきりとは見えない雄太郎さんの表情は、とても怖いものに感じた。
「それは、私が『過去のことなんか忘れたい』って望んだから?」
「それは……」
そう言って、雄太郎さんは次に話す言葉を飲み込み、私の後ろにいた三人に、「すごく大事な話だから二人でしてもいいかな?」と言った。
「優花に全部話してくれるんならいいよ」
一紀の言葉に雄太郎さんは「うん。約束する」と言って頷いた。
一紀と拓はそれを聞いて、元来た道を戻っていった。
最後まで戻れずにいたのは菜子だった。
「菜子、大丈夫だから」と、私が声をかけると、菜子は戸惑うようにしてよろよろと後ろに小さく下がると、意を決したかのように力強く振り返って二人の後を追っていった。

