「優花の記憶、戻せるの?」
その言葉にすぐに食いついたのは菜子だった。
「雄太郎さんの話だと戻せるかもしれないって。だから行こうぜ」
拓は、我慢を切らしたかのように私の手を力強く引っ張ると、近くにあった下に行ける階段のチェーンをまたいだ。
「これって行ってもいいの?」
「大丈夫。これは地元の人が、観光客が下の海に行って海を汚さないためにしているチェーンだから」
拓はチェーンをまたぐ私を待って、「足元気をつけろよ」と私のことを気にかけながら急な階段をゆっくり下がってくれた。
私たちの後から菜子と一紀もゆっくりと追ってきた。
階段を降り切ると、そこはごつごつした岩場で足元がおぼつかなかった。
上を見上げると、私たちがいる場所は、ちょうどさっきまでいた場所の真下あたりにあって死角になっているようだった。
岩場に波が当たってぽうっとした青い光が強く光っては消える。
足元から顔を上げて、ここにいるであろう雄太郎さんを探そうとしたその時、
「優花」
私たちの後ろの方から雄太郎さんの声が聞こえた。
「そこ岩場で足元危ないからこっちにおいで。こっちの方はちょっと細かい石がたくさんあって浜みたいになってた足元安定してるから」
雄太郎さんは自分の持っていたスマホのライトをつけてくれて、それを頭の上で振って自分の場所を知らせた。
私たちは岩場をゆっくりと歩き、雄太郎さんの元へとたどり着いた。

