「っふっうっ……」
 


「……ちゃんと会って話せばいいと思う。行こう。下に降りられる階段があるから」
 


「うん……菜子と一紀も一緒でもいい?」
 


「おう。菜子!一紀!ちょっと来て」
 


拓が菜子と一紀を呼ぶと二人とも振り返ってこちらにすぎに駆け寄ってくれた。
 


「え!?何で泣いてるの!?拓に泣かせられたの?」
 


暗闇の中で、菜子が私の顔に近づいて頬に流れていた涙を手で優しく拭ってくれた。
 


「俺らが見てないところで何してんだ」
 


一紀が拓に詰め寄ったところで、拓が慌てて「下に雄太郎さんが来てる!」と、一紀の勢いをかき消すようにはっきりとした声で言った。
 


「雄太郎さんが来てる?どういうこと?」
 


「実はお前らがホテルに行ったあと、俺、雄太郎さんに会ってたんだ」
 


「は!?何でお前それ言わないんだよ」
 


「いや……なんかお前らがここに来たの内緒にしてるからって。言ったら逃げられそうだし、ここに来るまでは黙っててくれる?って言われたから……」
 


「……お前、絶対騙されやすいよな」
 


「……」
 


拓は一紀に言葉を返されて、拗ねるようにして下を向いたけれど、すぐに一紀の方へ顔を戻すと「だって、彩智の記憶を戻したいから協力して欲しいって言われたら、信じたくもなるだろ?」と言い返した。