「出ないの?」
 


「……」
 


「……出た方がいいよ」
 


「え?」
 


拓は私の手からスマホを取ると、通話ボタンを押して私にスマホを返した。

スマホを耳元に持っていくと『優花』と、私の名前を呼ぶ雄太郎さんの声が聞こえた。

どこか外にいるのだろうか。

風の吹く音で雄太郎さんの声が途切れ途切れに聞こえる。


途切れ途切れの言葉だったけれど、その内容は私の心の奥にまで届いてくるほど衝撃的な内容だった。
 


「下に……いる?」
 


『そう』
 


「下って、今私たちがいるところってこと?」
 


『そう。拓君は分かってるはずだから案内してもらって』
 


その言葉に驚いて拓を見たら、拓はすでに私の手を握っていた。
 


「え、ちょっと待って、どういうこと!?」
 


「大丈夫」
 


そう言って拓は、握っている私の手をさらに強く握った。
 


「雄太郎さんは、味方だから」
 


「それって……本当に?」
 


拓が力強く頷いたのを見たら、涙がじんわりとこみあげてきた。