「ついた。降りよう」
拓が立ち上がると、それに釣られるように前の座席の人たちもパラパラと立ち始めた。
興奮が冷めきれぬままのお客さん達がバスを次々と降りていく。
私は力が抜けるような感覚がしたが、それに逆らうように膝に力を入れて立ち上がった。
せっかく来たんだ。
ちゃんと確かめなきゃ。
人の流れに沿って進んで行くと、柵によって遮られているようなところが見えた。
そこに近づいていくと、真下に信じられないくらい綺麗な光景が広がっていた。
柵から下を見下ろすと、真っ暗なのにそこがどんな形をしているのか、そこに何があるのかが分かる。
波が岩に当たって弾けて、青い光がぱっと飛び散ったかと思うと消える。
青い光の中に大小様々な形をした岩が海から頭を出し、真っ黒く見える。
さっきまでバスの中から見ていた、人工の光とは比べ物にならないくらい透明感があって綺麗だった。
その光を見ていたら心臓が高鳴っていくのを感じた。
「うわあ!きれい」
菜子が感動して、柵から上半身を乗り出すようにしてその光を興奮気味に見ていた。
一紀も同じで菜子の隣で一緒にはしゃいで見ていた。
そんな中拓と私は、その二人の後ろからその青い光を眺めていた。
「近くで見ないの?」
「俺は、地元でいつでも見ることが出来るから……」
「そういうもん?」
「うん……」
心なしか、拓は元気がないようだ。
その時、ショルダーバックから電話の着信音が聞こえた。
バックからスマホを取り出し確認してみると、電話は、雄太郎さんからだった。

