夜になり、私たちは青い海が見える場所に移動することにした。

調べたところ、そこは青い海が見えるだけでなく大小さまざまな奇岩、怪石、洞窟などもあるみたいで夜はそれがライトアップされて綺麗に見えるのだそうだ。

夜の人気スポットらしく、駅からホテルなどを経由してスポットへ向かうシャトルバスが出ているということで、拓と合流して、一緒に行くことにした。
 

ホテルの前には10人ほどの列ができていて、私たちはその最後尾に並んだ。

ひんやりした夜の風と一緒に海の香りが鼻の中を通り抜けて行った。
 

バスに乗り込むと、拓がバスの一番後ろの席のど真ん中に座っていてくれて、場所を確保してくれていた。

私は窓際に座り夜の海岸線をぼんやりと眺めた。


夜の海岸線は真っ暗で、ゴールデンウイークに来た時に私を必死で探す一紀から隠れて潜んでいたことを思い出した。

そしてそれとともに、ふと、最後に頭の中に浮かんだ光景を思い出した。
 
青い海を上から見下ろしたような景色。

その景色がすごい勢いで近づいてくる。そして思ったんだ。
 


「私が、落ちた……」
 


その言葉をそっと落ちるように零した瞬間、背筋がざわっとした。

それと同時にバスの車内に、わあっという感動の声が、突然、打ち上げ花火のようにぱっと広がった。
 

目に飛び込んできたのは、ライトアップされたごつごつした岩。

バスはお客さんに楽しんでもらおうとゆっくりとスピードを落とした。
 


ゆっくりと走るバスは、ライトアップされた岩たちを追い越しながら、広くなった駐車スペースで止まった。