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私たちは、これから用事があるという拓と別れてホテルにチェックインすることにした。
簡単な昼食をコンビニで購入してホテルに向かった。
駅前にあるホテルは八階立てのこじんまりとしたホテルだ。
高校生だけの宿泊ということで、事前に宿泊同意書が必要だったが、簡単な書類だったので、高校生だけでも泊まることが出来た。
一紀はシングルの部屋で、私と菜子はツインの部屋に宿泊する。
バイト代だけじゃちょっぴり足りなくて、宿泊学習費を少しだけ当てたのが心苦しかった。
「あとで返すからね」とお金が入った封筒に手を合わせてからその中に入っていたお金を使った。
菜子が、コンビニで買ったサラダをもくもくと食べながら「そういえば、学校や家から着信ってきてる?」と言った。
「ううん。今のところ何も無し」
「おお。ということは、まだバレてないってことか。意外と大丈夫なもんだね」
「そうだね。本当は、宿泊学習行きたかったんじゃないの?」
「なんで?」
「だって、斉藤君も行くんでしょ?」
齋藤君というのは、春に菜子に告白した男の子で、菜子の話を聞くとそれなりに仲良くやってるみたいだ。
菜子は、斉藤君の名前を聞いた途端、サラダをのどに詰まらせたみたいでゴホゴホと軽く咳こんでいた。

