「まず、ゴールデンウイークの時拓と会った時あったよな?あの時、優花は自分が『彩智』だってことを知らなかったんだ。記憶を失っていて、両親は火事で亡くなっていたと思っていたし、雄太郎さんは自分のお兄さんだと思っていたんだ。だけど、拓がいった首の後ろの痣を調べてみたら本当にあって、それで雄太郎さんに確かめたら本当の兄妹じゃないってことを教えられたんだ」
 


拓はその話を黙って聞いていて、一紀は拓が頷いて話を理解しているだろうと思われる態度を感じ取ってから、ゆっくりと話を続けた。
 


「優花は、過去のことが知りたいって言ったけれど、雄太郎さんが『忘れたがってた辛い過去だから』って教えくれなくて、俺らで調べることにしたんだ。それで拓に頼んで優花のお母さんに連絡とってもらってここに来て話をした」
 


「そして実際来てみたら、彩智が買われたってことだろ?信じがたいけど、そうなのかもって……思うところはある」
 


「なんで?」
 


「彩智がいなくなってから、おばさんやたらと羽振りが良かったから。昼夜問わず出かけてるし、仕事とかどうしてるのかなって、父ちゃんも母ちゃんも気にしてたから……」
 


「でも、本当にそうかは雄太郎さんに直接聞いてみないと……」

 


「そうだけど、その雄太郎さんって人は、教えてくれないんだろ?」
 


「……雄太郎さんがダメでも別な人に聞けばいい……」
 


一紀が厳しい口調で呟いた。
 


「別な人って?」
 


「優花のお母さんが言ってる話しぶりから見ると、買った人は一人じゃない感じだった。『彼ら』とか『買った人達』って言ってた」
 


「心当たりあるの?」
 


「……」
 


一紀は、拓の言葉に厳しい表情になって静かに頷いた。