拓の家は、私の家のちょうど裏手側にあった。

拓は、家の鍵を開けて中に入ると、私たちを玄関から入ってすぐの部屋へ案内してくれた。
 


「狭いけど」
 


拓は、テーブルのわきに人数分の座布団をぽんぽんと置いて、引き戸を開けて隣にあるキッチンの冷蔵庫を開けると、中から冷えた麦茶を取り出してコップに注いでくれた。
 
私たちはそこに座り、ひとまず麦茶を飲んで落ち着くことにした。
 


「誰もいないの?」
 


「うん。父ちゃんも母ちゃんも夕方まで仕事で帰ってこないから」
 


「そっか」
 


一紀と拓が私と菜子の向かい側に座り、たわいもない話をしていた。

私が出された麦茶に手を伸ばし一口飲むのを見計らって、拓が訪ねてきた。
 


「俺、ちょっと分からないことが多いから、話聞かせてくれる?」
 


「……」
 


黙っていた私を見かねて「俺から話しても大丈夫?」と一紀が聞いてきてくれた。

私は、落としていた視線を一紀に向けて、こくんと頷いた。