荷物をコインロッカーまで運んでいると、汗がじんわりとにじんできた。高速バスの涼しい気温の中で移動していたからか、暑さが余計に身に応えた。
 


「ゴールデンウイークに来たときは涼しかったけど、暑いんだね」
 


必死になって運んでいる私たちを見て見かねたのか、一紀と拓が駆け寄ってきてくれて荷物を運ぶのを手伝ってくれた。

拓は、菜子の荷物を受け取りながら、菜子のことをじっと見ていた。
 


「なんでそんな泣きそうな顔してるの?」
 


「……」
 


菜子は、拓に話しかけられて固まっていた。

さっき拓の言動に大うけして笑っていたけれど、そもそも菜子は人見知りだ。

黙っている菜子の代わりに私が「菜子の困り顔はもともとだよ。別に泣きそうな顔じゃないから」を答えた。
 


「そうそう。泣きそうになる時は、もっと顔がぐしゃっとなる」
 


一紀が緊張している菜子をリラックスさせようと、わざと菜子が怒りそうなことを言って笑った。

そんな二人の様子を見て、おかしくて笑っていると、拓が私の顔をじっと見ていた。
 


「え……何?」
 


「……いや、別に……」
 


拓はそう言って、私から視線を逸らせると私の顔をあまり見ようとしなくなってしまった。