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浮かれている頭蓋さんを放って朝ご飯をかき込み、急いで部屋に戻ってきた。
どうしよう、動悸が収まらない。今すぐあの人を殺してやりたい。
…そんなこと出来ないけど。
「…可愛いとか、馬鹿でしょ」
自分には死んでも似合わない言葉に、不覚にもドキッとしてしまったのは内緒。
とりあえず気を紛らわすためにいつもより早めに大学に行く準備を始めた。
私の部屋にテレビはない。ケータイがあるし、新聞も一応とっているから情報に飢えることはないのだ。
だから今はすごく静かで、少しだけ、さっきまでの時間を恋しがる自分がいた。
「何を考えてるんだろ。別に好きってわけじゃないのに」
はたから見れば恋する乙女だ。
でも、あいにく私はそんな可愛げのある言葉に収まろうとは思えない。
誰かに必要以上に頼ることなんてしたくないのだ。そのために一人暮らしを選んだし、このアパートに来た。
そうそう、このアパートといえば。私と頭蓋さんが住居人のここは、麻野さんという人が大家。なんとなく雰囲気がアレな人だ。
「…朝から会いたくはないなー」
そう思ってしまうほど、ハイテンションでハイセンス。
だからといって、彼と会わない方法といえば自室の窓から飛び降りるくらいしか無く、虚しいことにここは二階だ。
態勢を間違えれば最悪死か骨折。
