入って来たのは新井さんと女性2人。
三人は奥のテーブルに腰を下ろした。新井さんが麻野さんと私に目を向ける。
「桐島さんも久しぶり。紹介しよう、向かいの奥が妻の理子、手前が竹永だ」
理子さんが上品に会釈する姿にはまさに、かっちりしたイメージのある新井さんの奥さんという雰囲気がある。
そしてその隣の竹永さん。
ん? 竹永さん……。
「……ああ!こんにちは」
「え、ここで働いているんですか!? えっと……お名前が」
「そういえば名乗っていませんでした、桐島 綾です」
理子さんへの名乗りも兼ねて言うと、やはり竹永さんだけ反応が違った。
そう、彼女は私にいわゆる宣戦布告をした竹永 沙智さんだ。
ずれかけた大きな眼鏡を掛け直す竹永さんは、相変わらず文学少女みたいな可愛らしい格好をしている。
「竹永、桐島さんと知り合いなのか」
「……ええまあ。えっと、とりあえずわたし、何か食べたいのですが……」
話題を逸らそうと努力しているのが見え見えだ。しかしもう夜9時を過ぎているのでお腹が空いているのは本当かもしれない。
オーダーを聞いた麻野さんが料理を作りだす。
「……あ、あの。頭蓋さんはまだお仕事中ですか?」
今のうちにと新井さん達に話しかける。
すると新井さんが少し首を傾げてから、ああ、と合点がいったように手を合わせて告げた。
「あいつは今手をつけている仕事が残ってるんだ」
「……頭蓋さんってどなた?」
「うちの職員の中で一番顔がいいやつだよ」
首を傾げていた理子さんは、その説明だけで頭蓋さんが誰だかわかったようだ。
彼女も同じ職場で働いているんだろうか。イケメンって認知度が高いんだなぁ。
