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カランと音をたてるバーのドアは、いつか来てくれた新井さんによって開けられた。
ようやく日が落ちた夏の夕飯時、カウンターで洗い物をしていた私は久々の顔に笑みを浮かべる。
私が麻野さんのバーでバイトするのは週4回。
特に何時からという細かな設定はないが、土日は必ず、そして平日のなかから二日。
一日のうちバイトの時間だけは決まっていて、いつそれをこなしてもいいがその間はバイト業務だけを行う。それだけ。
バーにやってくるお客さんは主に若くない男性。女性は逆に20代ぐらいが多い。
一ヶ月と少し働いてそれはわかったのだけど、新井さんが顔を見せてくれたのはその期間ぐらい久しぶりのことだ。
「アラ、来たわね」
今日バーを開けるとき、麻野さんから「新井と職場の人たちが来る」と聞いていた。
そこで私は昼の菓の提案を思い出した。
頭蓋さんは美術関係の職だということから、美術館を覗いてみようと言うのだ。
なんと短絡的な、と思ったが、実際私が毎日利用する電車はそのまま進めば美術館のある町へ行く。そう、頭蓋さんの降りる市中央の駅は美術館の近くだし。
行ってみるとなにかわかるかもしれない、ということで、今度の休みに二人で行くことになった。
しかし今、それよりも確実な方法を見つけた。新井さんに直接聞けばいいのだ。
「麻野、久しぶりだな」
「わあ、オシャレなところ。あなた、いつも一人で飲むときここに来てるのね」
「お、お邪魔します……」
