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お昼時、大学のいつものカフェ。
最近は一人のときもここに来ることが多い。雰囲気は麻野さんのバーよりはるかに好きだし。
菓をメールで誘ったところ、私の無愛想な文面とは対照的な、絵文字ばかりの了承メールが返ってきていた。
受信ボックスを見るとほぼ菓が名前を占めている。そういえば頭蓋さんのアドレスや電話番号なんかを知らないな。いらないけど。
「いらっしゃいませ。こちらの席にどうぞ、桐島さん」
席に案内してくれたのは、初めてここに来たとき注文をとってくれたウェイター。
物腰が柔らかそうで、おそらく知り合いであろう菓とは大違い。笑顔が素敵だ。
「今日は菓も来るんですか?」
「え……あ、はい」
「彼、友達少ないから。仲良くしてあげてね。多分悩みぐらいはきいてくれるよ」
はっとしてウェイターを見上げた。見抜かれている。
いつもは裏のない柔らかな笑顔に見えるのに、今の彼は意地悪い笑みを浮かべていた。そんなに悩んでいるとわかる顔だろうか?
いや、やっぱり彼も菓と同類なんだ。困ってる人を助ける前に笑うタイプだきっと。
と、そこそこ広いカフェ内に響くドアを開ける音。
「菓来ましたね……またあとでご注文を伺いに参ります」
すっと表情を変えた彼は、メニューと二人分のお水を置いて去っていった。
少し追っていれば離れたカウンター部分で他の店員と談笑している。おそるべし菓の知り合い。
