こんにちは、頭蓋さん。




「……本当は職場にも行かずに綾と一日中すごしていたいんだけど」

「知りませんよ。頭蓋骨は頭蓋骨なりに骨のデザインでも考えたらどうですか」



頭蓋さんが職場に行こうと行くまいと隣人で大学生の私が知ったことじゃない。


ところで、いつの間にかこうして炊事を任されてる私だけど、恋人でもない私は彼のことなんてほとんど知らない。


企業名、正確な年齢、出身地や。


ーー本当の名前さえも。



「頭蓋骨じゃないって。頭蓋」



甘いな、なんて指を振り澄まし顔の頭蓋さん。



「…そんな無駄なことじゃなくて、本名を教えてください」



いろとりどりの野菜でサラダを盛り付け、焼いていた卵を皿に乗せる。


むすっとしながら、リビングのテーブルに皿を置いていった。それを見て目を輝かせながら頭蓋さんは呟く。



「調べてごらんよ」

「そんなストーカーまがいのことしたくありませんっ。頭蓋さんが教えてくれれば終わるのに……」



実際、こんな、本名も知らない社会人の男性とキスをするなんていやだ。

……いつも流されているんだけど。