座っている私の前にきてどんと外の世界を断絶する頭蓋さん。意地でも私に外部との接触をさせない気だな。
「そんなにしてくれなくても……」
「俺も顔見られたくないから」
と言って彼は私の方に身体を向けてつり革を握った。
そして普段とは違う感覚に驚きながらーーただ自分が座っているだけでこうも違うのかと感心していただけだけどーー揺られることほんの15分ほど。
あと数分で大学に近い駅がやってくる。
「綾この辺だっけ」
ふーん、と外の景色を眺めている彼の顔はいつも通りすましたもので。無意識にこんな顔をしてるから女性の視線を集めるんだ。
じっと見つめる私に気付き、頭蓋さんが私の方に視線を向ける。
途端にこりと微笑まれーーる流れだったが、一瞬彼の身体が不自然に震えた。
「え、今のなんですか」
「なんでもない、から綾は気にしないで」
「いやそんな……」
そんなに見つめる顔がおかしかっただろうか。なんてペタペタ顔を触っていると、ふと視界で細かく動くものを発見する。
頭蓋さんの細くて綺麗な指だ。
くいくいっと小さな動きをする彼の指が指しているのは……。
